金融庁の金融機関向け指針を、資金繰り支援から再生支援に軸を移す

 コロナ禍の収束により事業活動がほぼ正常化したことを受け、金融庁は2024年4月から、金融機関向けの監督指針を改正する。その要点は、企業の資金繰り支援から事業再生支援の軸足を移すように明記する。
 改正案には、「資金繰り支援にとどまらない経営改善支援や事業再生支援等」について、「先延ばしすることなく実施する必要がある」と記し、安易な返済猶予などの延命策を講じるのではなく、債権放棄などを含む抜本的な改善策を実施することを求める。
 全国銀行協会に対しても中小零細企業の私的整理ガイドラインを改正するよう要請する。
 コロナが流行した2020年の春以降、金融庁は資金繰り支援を万全にするよう金融機関に求めていた。また、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関など(2020年5月からは民間金融機関によるものも開始)は、実質無利子・無担保のゼロゼロ融資で新規の資金を供給したりした。
 これらの多くは、保証協会による100%保証付き融資となっており、債権回収ができない場合には、保証協会が全額を肩代わりする。
 ゼロゼロ融資の利用件数は、22年9月末時点で約245万件、融資額は約43兆円にのぼるといわれている。2023年7月には、約5万社で返済が始まり、24年4月にかけて返済はピークを迎えるという。こうした状況を迎えて、金融庁は、安易な返済猶予が事業再生をより難しくするとみており、上記改正を行った。